ザ・マン

2023年12月6日放送のFNS歌謡祭にて、キンキーブーツの「RAISE YOU UP」が放送された。

2018年に同番組で放送された映像が50周年記念として特別に放映されたのだ。

 

彼が演じるローラに生で会うことは叶わなかった。

 

ミュージカルスターとしての彼に触れたのは2020年3月に観劇した「ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド」が最初で最後だった。

 

彼のファンとはとても名乗れない程度の人間が彼について書く資格はないのかもしれない。

ただ、あの哀しいニュースに触れたとき、衝動のままに舞台の感想を綴っていた。

 

せっかくなので、改めてここにも残しておこうと思う。

 

思い出して少し辛くなってしまうかもしれない方はここで引き返していただいた方がいいかもしれません。

この先の閲覧は自己判断にてお願いします。

 

 

***

 

 

【本記事は20203月に日生劇場で上演された「ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド」のネタバレを含みます】

 

 

 

 

訃報に接してからは、何をしていてもあのラストシーンを思い返してしまいます。

 

東京・日生劇場にて、202037日に初日を迎えるはずだったミュージカル「ホイッスル・ダウン・ザ・ウインド〜汚れなき瞳〜」は、新型コロナウイルス感染拡大に伴い延期を重ね、320日にようやく幕を開けました。

4月に富山・福岡・愛知・大阪で予定されていたツアー公演は全て中止に。

東京公演も予定されていた329日の千秋楽までを走りきることは叶わず、327日の公演をもって、その幕は下ろされてしまいました。

 

この頃はまだウイルスがどんなものであるのかも今より定かではなく、すっかり定着しつつある「無観客でのライブ配信」という形もとりようがない状況です。

 

そんな中、324日の昼公演を運良く観劇することができたのでした。

 

 

 

 

主演の三浦春馬さんはどちらかというと「テレビに出ている人」という印象で、生でお芝居を拝見するのはもちろん初めてでした。

ただ、彼を初めてテレビで見たときの印象だけは鮮明に覚えています。

 

「キレイすぎて、逆にムリ」

 

こんな日に使う言葉ではないのですが、どうかお許しください。

別にイケメン恐怖症とかではありません。

これまでも2.5次元をはじめ、いわゆるイケメン枠の俳優さん、タレントさんにはいつも楽しませていただいていますし、キレイならキレイに越したことはないと思っています。

だからこそ、こんな感想を自分が抱いたことに衝撃を受けたのでした。

 

少々歪んだ形ではありますが、それくらい私の中では「別格」であったのだと思います。

 

 

 

 

そんな人が主演ーー座長にいる舞台。

こんな美しい人間をキャスティングしたにもかかわらず、髪はボサボサ、衣装はボロボロ、脱獄犯であることは作中からわかるものの、詳細は語られずというか、本当の名前すらわからなかった。

 

逃げ込んだ納屋で出逢った少女に、イエス・キリストの生まれ変わりだと信じ込まれた男は最後、その納屋に火を放って姿を消します。

痕跡がないことから、逃げ延びたのではないかと読むことはできますが、物語のその後については観客に委ねられていたように思います。

 

きっとまた同じキャストで帰ってきてくれると思っていました。

そして、そのときには自分なりの解釈を持って劇場に足を運びたいと思っていたのですが結局謎は謎のままになってしまったようです。

 

舞台の内容とか、もっと書けたと思うのに、キービジュアルの夕焼けのような色合いと、ザ・マンが最後に放った炎がどこか重なって、頭の中を侵食してきて、これ以上はうまく言葉が出てきません。

 

 

ご冥福をお祈りします。

 

 

(2020年に書いていたnote(閉鎖済)より転載)